「附中追究単元探訪」その2

附中の追究の授業について深く考えることのできるこのコーナー。
みなさんがどんな思いで、どんな顔で、そして、どんな姿勢で見ているかはわかりませんが、自分が附中で授業をしてきて感じたことをまとめてみます。

インタビュー形式でどうぞ。

-ちっす。よろしく~。国語の追究の授業って~、やっぱり~、小説とかをめっちゃ読みまくるんですかあ~?
「『めっちゃ』の解釈に迷いますが、よくあるパターンは、一つの短編小説をじっくりと読むというものが多いです。」

-超うけるし~。ねえ、じっくり読むって、どういうこと~?
「その作品に出会うと、どうしてもひっかかることがあって、これどういうことなんだろう、あれどういうことなんだろうという問いがあふれて、その作品が何を描いているのかについて考えるなど、作品と真摯に向き合う作業のことです。」

ーふ~ん。じゃあ、一人一人がそれぞれ作品に向き合うってことは、授業で一斉にやる必要なくないですかあ?たるくないですかあ?
「(あくまで笑顔で)たしかに、一人一人読んで、一人一人の解釈があって、それでおしまいでもいいんだけど、それだとさみしいというか。一人一人の解釈の違いを楽しみながら、その作品の本質に近づいていくことに醍醐味があると思います。」

-大ゴミ?大きなゴミってこと?大きなゴミがあるなんて、超やばいし~。くさいし~。
「そうですね、ゴミってくさいですね。」

ーそういえば、小説って、たとえば、どんなの読むのお~?
「自分が授業でとりあげたことがあるのは、朝井リョウや川上弘美、吉本ばなな…」

ーバナナ?超うまいし~。
「……。あとは、西加奈子、三崎亜記とか…。」

ーまったく知らないし~。で、小説以外はやらないの?
「やるし~。あ、ごめんなさい。やります。たとえば、味を言葉にして表現したみり、町の風景を言葉にして表現したりするなど、エッセイを書くような単元をやったこともあります。味を表現するにはどうしたらいいのか、自分の見た風景を誰かに伝えるにはどうしたらいいのか追究していくような単元です。」

-エッセイ、超エモいし。で、エッセイって何?何系?
「(軽く無視して)あとは、短編ドキュメンタリー映画をつくるような単元もありました。「命」に関わるドキュメンタリー映画を観た子が、「命をどうやって表現したらいいんだろう」って思って、いろんなとこにインタビューに行ったり、撮影したりして。幼稚園の小さな園児に向かって、『命ってなんだと思いますか?』って聞いたりとか。まあ、作品としては完成しませんでしたが、映像と言葉の表現を学びながら、命について考える単元でした。」

ードキュメンタリー映画、出たい~。出たい~。出!た!い!出!た!い!
「出れるといいですね。それから、トンコハウスって日本のアニメーショングループがつくった短編アニメ『ダムキーパー』(アカデミー賞にもノミネート)を使って、その作品が描いているものを追究したりとか。そのときは、実際に、そのアニメ会社の絵描き担当の人とスカイプでつないで、作品について語り合ったりしました。

「最終的には、てづくりの映画パンフレット(クラス全員のコメントつき)をつくって、トンコハウス様に送ったりもしました。」

ダム・キーパー オリジナルチラシ

ーアニメでもやるんだね。ヤバみが深いわ~。
「演劇を取り上げたこともあります。平田オリザさんという有名な劇作家がつくっている『ロボット演劇』『アンドロイド演劇』をとおして、人間に心はあるのか?人間らしさってなんだろう?という問題を追究していく単元でした。そのときは、マツコロイドを作ったことで有名な石黒浩さんの文章も使ったり。あと、実際に、平田オリザさんには、附中に来ていただいて、あの育朋館のステージに立派な舞台をつくって、アンドロイド演劇(人間とアンドロイドで一緒に劇を行う)をやったもらいました。更に、その後は、「人間らしさとは何か」について、平田オリザさんと生徒で激論を1時間半ぐらい行いました。あのときは、平田さんの言葉の巧みさにみんな負けてしまい、悔しい思いをした子も多かったです。その会の後、教室に戻ったら、黒板に、『打倒オリザ』と書いてあったのもよい思い出です。」

-ふ~ん。ていうか、話、長いし。長いしめだし。
「あと、日本手話をテーマにやったこともあります。日本手話はただのジェスチャーではなく、一つの言語であるということに気づき、ろう者と聴者の壁をどうしたらよいのかという、言語論的な文化論的な単元でした。そのときは、最終的に、希望者をつのって、冬休みを利用して、東京に行って、有名な学校「明晴学園」で交流したり、その後、渋谷に行って、「異言語脱出ゲーム」という、ろう者と聴者が力を合わせないとできない脱出ゲームをやったりとか。その脱出ゲームの様子は、後に、Eテレで放映されたりもしました。」

ーEテレ、超やばいよね。がんばったね、あんた、本当にがんばったよ。
「ありがとうございます。自分ががんばったというか、追究は、生徒一人一人の力とのめりこみぐあいにかかっています。それに、教室でとどまらず、これをもっと明らかにしたい!ってどんどん外に飛び出す行動力も大事になってきます。もちろん、言葉に向き合うときは、ひたすら黙々と文章に向き合うことも大事ですし。自分で自分の追究の可能性を狭めてしまうのはもったいないですね。あと、意見交流は、他の教科よりもいっそう大事だと思います。自分の考えと仲間の意見の違いを見つけながら、本質を探っていく過程はすごくおもしろいです。国語は、やっぱり、すてきな教科です。国語科の追究、ぜひ、楽しみにしてください。」

というわけで、だいぶ長くなりましたので、ここで終了です。
今回のお相手は、森 卓也でした。長文、失礼いたしました。