「附中追究単元探訪」その8

いよいよ附中追究単元探訪も第8弾となりました。

今回は、まだ登場していないあの教科です。
みなさん、「お相手」を予想しながら、探訪してみてくださいね。

さっそくですが、みなさんは「附中の自由」とはどのようなものだろう」と問われたら、どのように答えますか。附中は「自由」のもとにある学校とよく言います。でも自分たちが中学校で過ごてきた証でもある「附中の自由」とはどんなものなのでしょうか。

そんな「附中の自由」と向き合い、表現したい」と始めたのが、このレリーフの時計の単元(美術科)です。

まずは「附中の自由」を考える必要がありました。
以下は、去年の3年生のNさんが考えた「附中の自由」です

・学ぶ自由(追究やLifeworkを通して意欲的にかつ好きなことが学べる)
・創る自由(行事の姿。友達と、先生と練った思考で創りあげていく)
・主張の自由(意見交流、修学旅行で発信することができる)
・選択の自由(自分の良いと思う選択をし、先生もそれを重んじてくれる)

「自由」が生きた証なのだからこそ、こんなにもたくさんの種類があるのですね。考えたことで、「自由」を表現したいという意欲が高まっていきました。

ではどのように表現していくのでしょうか。
動物、植物、風景などの具体的なモチーフがあれば、そのイメージを広げて表現できるのですが、「自由」って具体性のないテーマ…果たしてどのような表現方法を取り入れればいいのでしょう…
以下はNさんが表現方法を考え、それをもとに意見交流をして感じたことです。

私は、想いには具体的な形がないため、抽象表現がいいと思った。しかし、伝えるには、わかりにくいと思った。意見交流では、抽象表現の魅力は、「物事から要素を抜き出して使うため、自由をより理解する必要がある。点・線・画・色彩を追究した表現である。」と語った。仲間の意見では、「画家は絵を分からせようとしていない。だから私たちは、どのような絵なのだろうと感じる」という意見があった。これに対して私は、抽象表現は分かりにくい絵ではなく、考えさせる絵だと思った。

「抽象表現は考えさせることができる表現方法のではないか、だからこそ「自由」を抽象表現で表し、見る人にも考えてもらいたい」、そんなことを思い、Nさんは抽象表現で「自由」の形を考え始めました。

Nさんは、3年間で最も感じた「選択の自由」を表現すことにしました。「自分で決めて、自分で動く。失敗しても、そこから学ぶ。先生も、仲間も、自分の選択を聞いて、重んじてくれる」附中にはそんな環境があると感じたからです。

Nさんは、選択を表現するにはさまざまな要素が必要だと考え、それを中心から広がるようにしたり、下から上へ広がるように描いてみました。しかし、広がりを見せるだけでは物足りなかったので、模様をつけてみることにしました。選択とは、自分で考えていくことであるから、ひらめきとして黄色を使い、さらに3年間でより深く考えていけるので、中心に向かって濃くなるグラデーションを活用し、更に、結果を想像することをしゃぼん玉にしたり、想いを貫くことを鋭角にしたりすることで、デザイン案を考えました。

そして、クラスのみんながデザインを考えたところで、全員の作品を見合う鑑賞と意見交流を行いました。

「自由」の流動性を水で表現したアイデア、素直を原色で表現したアイデアなどさまざまな「自由」への思いを表現した工夫がありました。その中で、Nさんは、規律との調和をコントラストの構成で表現した作品に注目しました。守るべき規律を鋭角、自由を円や曲線、かたちの広がりで表現していた。お互いが違う形でだからこそ引き立てあっていると感じました。お互いを引き立て合う関係…Nさんは「自由」と規律の関係に着目しました。そして鑑賞と意見交流後、Nさんはこんなことを感じました。

自由を追い求め、規律を忘れていた私は、作品を更新するか迷っていた。しかし、ある子の発言によって、このままでいこうと決めた。それは、“私たちの作るものは時計。時計は、時間という規律の一部である。”といったものだった。デザインは秒針の背景となる。つまり、私の描いた自由は規律に包まれている、そう思った。

Nさんは、意見交流をとおして、自分の考えを更新し、自分にしかできない「自由」の表現をして、作品を完成させていきました。

自分たちの日常で大切にしているものの正体を探りながら、表現の仕方や工夫を模索していくさまは、主体的に学んでいく附中生の素敵な姿です。

美術は、みなさんの心の中にある感性を磨く教科です。
今後も、主体的に学ぼうとする附中生とともに感性を磨いていきたいと思います。

本日のお相手は、那須弘典でした。