「附中追究単元探訪」その12
ふるさとに生きるpart3(最終回)
『飯舘村の魅力は何か?』
3日間の福島視察を終え、福島の安心を発信するために、改めて「福島・飯舘村の魅力」について話し合った。そして、「飯舘牛」に目を付けた。
飯舘村では、かつて、村をあげて畜産に取り組んでおり、「飯舘牛」としてブランド化に成功した。
しかし、福島視察で一度も牧場や牛を見ていない。それもそのはず、飯舘村での畜産は、再開に向けて実証実験が行われたばかりで、数件の畜産農家が再開したばかりであった。
飯舘牛を復活させられれば、飯舘に産業が根付き、飯舘に人が戻ってこられるのではないか。
『飯舘牛をとおして、福島の安心を届けたい!』
飯舘牛に可能性を見出した生徒たちは、飯舘牛をとおして、福島の安心を発信しようと動き出した。その手段として、文化祭で参加者に飯舘牛を試食していただく「模擬店の開催」を選んだ。まずは、身近な人に実際に食べてもらおうという試みである。
肉は、仮設住宅のかたから聞いた、牛を100頭つれて千葉に避難した小林さんが育てた牛だ。小林さんは、千葉で飯舘牛の血統を受け継ぎ、「までい牛」として育て続けていたのだ。その情報を仕入れた生徒は、千葉県山武市の精肉店に問い合わせて、「までい牛」を取り寄せた。
また、食べていただくだけでは、飯舘牛の魅力を伝えきれないと考えた生徒は、今に伝わる飯舘牛のストーリーを紹介したパンフレットを作成し、模擬店に来てくれた人に配付することにした。
文化祭当日、模擬店の前には、開店前から長蛇の列ができた。そして、1時間足らずで用意した300食分のまでい牛は完売した。また、模擬店に来てくれたかたにアンケートをお願いしたところ、次のような回答を得た。
・までい牛に満足(10代未満・・・80%、10代・・・94%、20・30代・・・100%、40代・・・89%、50~70代・・・100%、平均:94%)
・コメント欄「食べる前は抵抗があったが、普段食べている牛肉と比べられないくらい美味しかった」など
まずは身近な人に安心を届けるという目標は達成できた。このような活動を続けることで、福島の安心は取り戻せると確信した。
『飯舘村のチャレンジは、今の未曾有の事態への向かい方に通じる』
今回の取り組みをとおして、「ふるさととは何か」を考えた。実際に福島のかたと交流させていただいて、ふるさとへの熱い思いを感じることができた。ふるさととは、「普段は意識しない空気のようなもの」であり、「家族のような存在で、なくてはならないかけがえのないもの」だ。それを守ろうとするのは当然のことである。
福島に限らず、これからの日本は、少子高齢化と都市部への人口集中が加速度的に進み、地方の存続が危ぶまれている。これは、「ふるさと」の消失につながる。
そんな中、震災被害に立ち向かう飯舘村のチャレンジは、独創的かつ革新的だ。今後の地方の在り方のモデルケースになり得る。
また、今、世界中で、当たり前が奪われた現実がある。この未曾有の事態への向かい方においても、飯舘村の「までい」の心や、「当たり前に感謝し、強い決意をもって、よりよい未来を創っていく精神」は、大いに参考になる。
生徒たちは、今、どのようにこの取り組みを振り返っているのだろうか?いつの日か、是非聞かせてほしい。
3部作となった「ふるさとに生きる」は、これでおしまいです。
最後までお付き合いくださりありがとうございました。
本日のお相手は、伊倉でした。
これで、「附中追究単元探訪」は、ひとまず終了です。
応援ありがとうございました。