日本手話から見えてくるろう者の世界 -附中生の追究-
今日は、附中生が教材との出会いから追究を深めていく過程を紹介します。
日本で唯一日本手話を学習しているろう学校を取材したドキュメンタリー番組や、ろう者の思いが綴られた文章に出会った2Bの子どもは、「手話とは何か」「ろう者の世界はどのようなものか」といった問題に出会いました。そして、追究をとおして、聴者とろう者の世界をどのようにつなげばよいのかについて考えてきました。インターネットや書籍で情報を得たり、取材に出かけたりすることで、一人一人追究を深めていきました。その中で、ありがたいことに、子どもは4回の交流をとおして、多くの方と関わりました。
まずは、国立民族学博物館で研究補佐員をされている磯部大吾さん。大阪からわざわざ附中に来ていただきました。ろう者であり、手話言語学の研究もされている磯部さんからは、「手話は言語である」というテーマで話していただいた後で、意見交流を行いました。子どもから多くの質問が出されました。また、ミニマルペアという言語の条件についてもわかりやすく教えていただきました。
次は、豊田工業大学で教授をされている原大介さん。日程が合わず、来校していただくことはかないませんでしたが、スカイプでの交流に応じてくださいました。原さんは聴者で、言語学の研究をされている方です。その中で、「言語は文化であり、アインデンティティそのものである」ということを伝えていただきました。言語学の奥深さにふれ、手話を言語として、そして、文化として捉えることの大切さを実感できました。
続いては、岡崎聴覚障害者福祉協会の守本健児さんと早川正美さんにお会いしました。お二人ともろう者ですが、それぞれに日本手話には特徴(個性)があり、視覚言語としての豊かな魅力に気づかされました。お二人を交えて質疑応答を行ったり、グループに分かれて、実際に手話で表現することを体験したりするなど、日本手話の豊かさを楽しく実感できる時間となりました。音声言語とは違う、視覚言語としての手話の魅力に気づくことができました。
最後は、岡崎市在住の高岡真美さん。ろう者であり、日本手話による絵本の読み聞かせの活動などを行っている方です。子どもにとっては人生初の日本手話による読み聞かせ。作品は『たつのこたろう』。日本語の読み聞かせよりもたくさんの時間はかかりますが、表情や手、体全体の動きを使っての読み聞かせに子どもはぐっと集中して聞くことができました。その後は、アプリを使ったコミュニケ-ションをしたり、質疑応答を行ったりしました。家族の話もしていただきながら、言語としての日本手話の魅力、ろう者としてのアイデンティティについて考えることができました。
今まで手話のことや、ろう者のことをあまり考えていなかった2Bの子どもも、追究をとおして、実際にさまざまなろう者の方と出会い、日本手話を間近に感じることで、手話やろう者の文化について学んできました。まずは、理解すること。そして、それを多くの人に知ってもらうこと。そうすることで、ろう者と聴者の世界はつながっていくのかもしれません。(2年国語科担当 森)