新研究を立ち上げ、研究を推進するために、東京科学大学理事・副学長の白井俊先生をお招きし、ご指導をいただきました。

白井俊先生は、2000年に文部省(当時)に入省後、徳島県教育委員会、OECD教育・スキル局アナリスト、文部科学省初等中等教育局教育課程課教育課程企画室長、大学入試センター試験・研究統括補佐官、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局参事官などを歴任されました。また、『OECD Education2030プロジェクトが描く教育の未来』(ミネルヴァ書房2020年)、『世界の教育はどこに向かうのか―能力・探究・ウェルビーイング』(中央公論新社2025年)などの書籍を執筆されています。

当日は、理科の授業(3年・大羽昭徳教諭)を参観いただいた後、「世界の教育はどこへ向かうのか」という演題のもと、以下の内容についてご指導をいただきました。①世界の教育動向、②コンピテンシーと21世紀型スキル、③Education2030の背景と考え方、④ウェルビーイングとエージェンシー、⑤カリキュラム・オーバーロード、⑥「探究」の検討、⑦これからの教育を考える

以下、本校職員がまとめた3つの感想を掲載します。

1 資質・能力について
現行の学習指導要領を初めて見たとき、突然出てきた資質・能力とはいったい何なのかと、今にいたるまではっきりとした理解に到達できていませんでした。本日のご指導を受けて、資質・能力がどこからきたものなのか、そしてその資質・能力を育むことが、エージェンシー、ウェルビーイングにつながっていると理解しました。そのゴールが位置づけられているからこそ、「主体的、対話的で深い学び」や「教科の見方・考え方を働かせること」「アクティブラーニング(IBL、探究)」の必要性を理解することができました。
2 附属学校で勤務する者として
国立大学附属学校には、日本の公教育の根幹を支え、教育水準の向上を図るという使命があり、地域の教育への奉仕機関となります。本校でいうと、三河地区の教育をリードしていく立場になるということです。その一方で、公立の小中学校は、働き方改革や若い世代の大量採用、多様化する生徒指導対応など、国(世界)が求めている教育を目ざすことすらもハードルが高いと感じることがあると聞きます。
本校は、本校のやり方で、本校の子どものために、本校の子どものWell-beingのために教育していきますが、一方で、三河地区の先生がたの共同エージェンシーとしての自覚を忘れてはならないと感じました。本日ご示唆いただいたことを踏まえ、三河のために、本校の子どものために精進してまいります。

1 教師のエージェンシーとそれを発揮する方向性
「教師のエージェンシーを重視した教育改革」とは、つまり私たち教員が主体的に教育を改革していかなければならないのだという、白井先生から私たちへの激励だと感じ取りました。大事なのは、エネルギーの方向性。今の本校は、教師のエージェンシーをどこに発揮するのでしょうか。
本校の探究レベルは高いと考えます。「探究」のレベル3以上で4に近いと捉えます。しかし、これは学級という全体を対象としたもので、個を対象としたときに、その勢いに格差が生じます。この個の探究に向けられる子どものエージェンシーが育てられたら、とてもすてきだと感じ、探究に没頭する子どもを育てたいと思いました。
「エージェンシーは、他者との関係性のなかで育まれるもの。」学校生活はもちろん、探究の中で他者との関わりをもち、エージェンシーを育み、自身の幸せをつかむ子どもを目ざしていきたいと思います。
2 コンピテンシー主義とその評価
現在、本校の新研究において、探究学習によって育まれる力をカリキュラム化しようという流れがあります。白井先生のコンピテンシー主義の評価にあるように、どこまで明確な形で能力を評価できるかが鍵となります。文章で記述したとしても、それを見取って評価する過程がまだまだ難しいと考えます。大事なことは、その育まれた能力を私たちがどのように見取るかという教師の観察力と分析力だと考えます。
生活教育を基盤として探究学習のメッカと捉えている本校に身をおく今、私の身につけるべきことは、子どもの問題解決における能力を見取り、子どもの能力を高めていくことだと考えました。

1 キー・コンピテンシーを子どもが身につけていくうえで重要なこと
コンピテンシー主義の課題として、「どこまで明確な形で能力を評価できるか」というお話がありました。本校の教科部会でよく話題になる、「この単元、この一時間で何がどうなればよいのか」という点を明らかにすることが、この課題を解決していくために重要になると考えました。
各教科で育む資質・能力は、学習指導要領にも書かれていますが、それを見取れる具体的な姿を想定し、それぞれの学年で、どの段階まで育むのかを明確にすること、自分自身が担当する学年、学級、さらには子ども個人の現状を見取り、どういうてだてを講じれば資質・能力が具現化されていくのかを考えていくことが必要なのだと思いました。
2 探究のレベルを引き上げていくうえで重要なこと
各教科の中で「その強化における関係性のエッセンス」を示していくことが重要であるというお話がありました。探究している子ども、または、探究を終えた子どもが、教科の意義やおもしろさ、重要性を感じることができれば、その場かぎりの学習ではなく、「学んだことを生かして、さらに探究を続けていけるという展望をもてる学習になる」というお話を受けて、そういう学習を成立させるには、子どもが現在どのレベルの探究ができる状態なのかを見取り、この一時間で、どのレベルの探究をするのかを明確にした授業を積み上げていくことが必要なのだと考えました。それが、キー・コンピテンシーを子どもが身につける授業の成立にも関わってくるのだと感じました。